[物語] 男の思い出

ある男がいた。
彼には愛する彼女いた。
ある日その彼女が交通事故で植物人間になってしまう。
男は絶望する。
「神様、どうか彼女を助けてください。ぼくにできることは何でもします。」
どこからともなく声が聞こえてきた。
「彼女との大切な思い出を差し出しなさい。
思い出の数だけ彼女の体を少しずづ回復させてやろう。
そのかわり、差し出した思い出は二度とお前に戻らない。
お前は差し出した分だけ思い出を忘れてしまう。
それでもいいか?」
男は思い出を思い浮かべ、そして差し出した。
彼女の目が醒めるまで、男は自分にとってかけがえのない大切な思い出を延々と差し出し続けた。
彼女を助けるために。
そして最後の思い出を差し出したとき、彼女が目を覚ました。
彼女は一命をとりとめた。
彼女は男をみる。
そして彼が自分を助けてくれたのだということを知る。
彼女は男の名前を呼んだ。
しかし男はこう答えた。
「君はだれ?」

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